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ISS通訳研修センター日中通訳コース本科 1999.1.30

 

放送時差通訳実習

 現在、中→日の放送通訳が聴取できるのは、NHK衛星放送のCCTVニュースおよびスカイパーフェクTVのCTN中天チャンネルです。CCTVでは日本時間午後8時に入ってくる定時ニュース(30分)をビデオ撮りしたものを翻訳し、深夜12時45分から日本語でボイス・オーバーします。約12分ほどに編集したものを二名で担当していますから、一人あたりの作業時間で換算すると、6分間の内容をおよそ4時間(240分)で準備していることになります。ビデオを繰り返し見ながら、翻訳原稿を作っていくわけですから、放送時差通訳は、通訳よりもむしろ翻訳に近い作業なのですが、最終的なアウトプットを音声で行うため、現在NHKでは翻訳者ではなく会議通訳者が仕事を担当しています。
 香港のCTNではNHKとは違う方法を採用しています(これについては2月6日の授業にゲストを招いてお話していただく予定です)。

 放送時差通訳実習で注意しなければならないのは以下の二つの項目です。

1. いかに要領よくコンパクトに翻訳するか。

2. いかに上手にボイス・オーバーするか。

 では、それぞれの項目について検討してみましょう。

1. いかに要領よくコンパクトに翻訳するか。

 全部訳せば400字以上になるものを40%少ない240字に縮めて訳さなければなりません。中国語はもともと非常に圧縮された言語ですので、普通に翻訳すると和訳の字数は平均して原文の150%になります。略語が出てこない場合でも五割増しになるのに、中国語ニュースは略語を多用します。例えば「三通」ですが、「通商、通郵、通航」を指していますね。これを普通に和訳する時には「三通」では読み手にわかりませんから、訳注をつけて「大陸と台湾の間で郵便、貿易、交通を自由化すること」などと解説を付け加えることになります。しかし、同じ時間内に音声での伝達を行わなければならない放送通訳では、こんな説明をしている時間はありません。しかもニュースの中国語は分速280〜300字の話速です。まともに訳せば一分間のニュースで420〜450字になります。しかし、音声で伝達することを考えると、日本語は最高でも分速300字くらいにしなければとても同じ時間で画面にあわせて読み上げることはできません。一分で300字話すというのは、早口のアナウンサーくらいのスピードです。我々がそれだけの速度で原稿を読むと、滑舌が悪いために何を言っているのか聞き手に分からなくなります。そこで、分速は240字程度にしたいと思います。

 つまり、中国人アナウンサーがニュース原稿を読み上げている場合には、全てを日本語に翻訳しても物理的に伝達不可能だということです(街頭インタビューの場面などは全部訳しても時間内に納まるかもしれません)。 そこで、何を残して何を削るのか、が問題になります。

 これからビデオに録画した中国語ニュースを流し、同時に各自のテープに録音します。テープは何度聞いても構いませんが、30秒のニュースに対して制限時間は10分間とします。以下の点に注意して翻訳を行ってください。

・あるひとまとまりのニュースにとって、何が重要で何が重要でないか。

 新しく出てきた情報は落とせない。

 日本人にとって興味のある部分は何か。

・内容伝達の機能を損ねないためには何を残すべきか。

 前後のつながりを省略しすぎるとわかりにくくなる。

 話の流れが分かるように接続詞を適切に使う。

・省略可能なものは何か。

 既出の主語は必ずしも必要ではない。人称代名詞もあまり必要ではない。

 映像で明らかなものは省略できる。

また、放送通訳は映像と音声での伝達になりますから、下記についても配慮してください。

・聞き手の理解に負担を与えないためにはどのようにすべきか。

 聞いてわかりやすい言葉を使う。難解な漢語や同音多義語は使わない。

 理解しやすい短い文で訳す。

 画面と聞こえてくる音声が一致していなければならない。

・聞き易い速度、発音、発声を維持する。

 分速240字程度なら舌がもつれることはないでしょう。但し、途中で言い間違えたり、休んだりすることは不可能ですから、日本語の発音と発声の練習を行い、滑舌を良くしておくことが必要です。

 翻訳と発表が終わったら、実際の放送通訳を聞いてみましょう。

2. いかに上手にボイス・オーバーするか。

聞き易い日本語の決めては母音をクリヤーに出すことです。そのためには発音発声練習をすることが一番の近道です。別紙コピーの練習問題を見ながら、実際に練習してみましょう。

 日本語の発音、発声練習を一通り終えたら、再度、中国語ニュースの翻訳と通訳の練習をしてみます。最初よりは楽に声が出ることを実感できると思います。
 次の段階では棒読みにならないように気をつけてください。来週も引き続き放送時差通訳実習の授業です。

以上


インターネット版では練習2と練習3は割愛しています。

ISS通訳研修センター日中通訳コース本科 1999.2.6

 

放送時差通訳の練習

 以下の中国語ニュース原稿(練習1,2)は香港CTN中天チャンネル「好消息」から引用したものです。

● 原文よりも三割ほど少ない字数で日本語に訳しなさい。翻訳の制限時間はそれぞれ20分間です。
● 翻訳終了後、各自LL装置を用いて5分間練習しなさい。
● 練習が終わったら同時通訳ブースでビデオを見ながらボイス・オーバーします。


練習問題(1):台北の病院が一人暮らしのお年寄りを招いてお食事会を開いた話題・1分15秒

−−−−−−

観衆朋友(イ尓)好,歓迎収看中天好消息。

天気寒冷独居老人的衣食問題令人担憂,台北一家医院今天中午席開十zhuo1,

邀請社区独居老人一同圍炉,為寒冷的冬天,増添一股暖流。

−−−−−−

从這些老人家厚厚的衣服可以感受到外面陽光雖然燦爛,

但是冷気団的為力依然不滅,寒風刺骨,不過這里缺弥漫着暖暖的熱気。

一zhuo1zhuo1老先生老太太圍坐在一起,吃着熱騰騰的佳肴。

這是台北一家医院席開十zhuo1,為社区独居老人辧的年終圍炉餐会。

老人家們雖然彼此不認識,不過圍坐在一起就好象一家人一様。

像這位94歳的鄭爺爺,平常一个人居住,三餐吃得簡單,

他説今天是難得豊盛的一餐。

「我感覚很光榮」     「平常吃有像今天這様的菜ma?」  「没有」   (台語)

「這几天天wi這麼寒冷,nin怎麼様去保暖ne?」   「就穿這麼多ya,多穿一点ma!」

「平常在家有没有吃得這麼豊盛ne?」    「没有 」 

就像老人家説的,這是一年難得的一餐,

餐会之后,他們又回到一个人的生活,衣食問題依然存在。


練習1のボイスオーバー終了後に配布したもの。

では、先ほどボイスオーバーの実習を行ったニュースが実際の放送ではどのように和訳されていたかを確認し、原文と訳文を比較してみましょう。

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練習問題(1):台北の病院が一人暮らしのお年寄りを招いてお食事会を開いた話題

観衆朋友(イ尓)好,歓迎収看中天好消息。
こんばんは、ニュースオアシスの時間です。

天気寒冷独居老人的衣食問題令人担憂,台北一家医院今天中午席開十zhuo1,
寒い冬の中の暖かな話題をお伝えしましょう。台湾のある病院は今日、

邀請社区独居老人一同圍炉,為寒冷的冬天,増添一股暖流。
一人暮らしのお年寄りを食事に招待したそうです。

−−−−−−

从這些老人家厚厚的衣服可以感受到外面陽光雖然燦爛,
太陽の光は射していますが、寒さは依然衰えません。

但是冷気団的為力依然不滅,寒風刺骨,不過這里缺弥漫着暖暖的熱気。
しかしどのテーブルにも暖かな雰囲気が漂っています。

一zhuo1zhuo1老先生老太太圍坐在一起,吃着熱騰騰的佳肴。
台北のある病院がお年寄りを招いて、

這是台北一家医院席開十zhuo1,為社区独居老人辧的年終圍炉餐会。
旧正月を前に食事会を開いたのです。

老人家們雖然彼此不認識,不過圍坐在一起就好象一家人一様。
初めて会った人どうしでもテーブルを囲めば家族のようです。

像這位94歳的鄭爺爺,平常一个人居住,三餐吃得簡單,
九十四歳の鄭さんも、こうした豊かな食事をとるのは

他説今天是難得豊盛的一餐。
久しぶりのようです。

「我感覚很光榮」     「平常吃有像今天這様的菜ma?」  「没有」   (台語)
「とても光栄です」 「いつもこうしたご馳走ですか」    「いいえ」

「這几天天wi這麼寒冷,nin怎麼様去保暖ne?」   「就穿這麼多ya,多穿一点ma!」
「寒いときはどうされていますか」         「多めに着込みます」

「平常在家有没有吃得這麼豊盛ne?」    「没有 」 
「家でも沢山食べていらっしゃいますか」 「いいえ」

就像老人家説的,這是一年難得的一餐, 
どうやらお年寄りにとっては滅多にない

餐会之后,他們又回到一个人的生活,衣食問題依然存在。
豪華な食事だったようです。

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練習1の訳文について話し合ったあと、練習2(ウイグル自治区の教育事情に関するニュース、1分15秒)を同様に翻訳・練習・ボイスオーバー・訳文の検討の順序で勉強しました。訳文の検討では主に省略可能な情報は何かについて話し合いました。以上の練習1、2は文字から文字への翻訳とボイスオーバーです。

練習3はNHK衛星放送からCCTVニュース(1分15秒)を選び、音声テープを制限時間20分で300字前後の訳文を作成しました。これは音声から文字への翻訳になります。その後の練習方法は練習1、2と同様です。