通訳翻訳論  2008.05.14
通訳の実務
@ 放送通訳
A コミュニティー通訳
放送通訳
テレビの二カ国語放送で海外のニュースや討論番組を日本語に通訳したり、在日外国人向けに日本語ニュースを外国語(現在は英語のみ)に通訳したりする仕事
放送通訳の形態 1 時差通訳
外国語ニュースを事前に翻訳し、放送時にはオリジナルの音声と同時に翻訳原稿を読み上げる(ボイス・オーバー)
ニュース番組受信
      翻訳・読み原稿作成 (数十分〜数時間の時差)  
                      ON AIR (放送) (ボイスオーバーで読み上げ)
放送通訳の形態 2 セミ同通
翻訳する時間がなく、一回か二回、ビデオに録画したニュースを見てすぐにON AIR
ニュース番組受信
     映像と音声で内容確認                                                                           ON AIR (放送)  (同時通訳)
放送通訳の形態 3 生同通
突発的な事故など速報性を要求されるニュースではぶっつけ本番で同時通訳をおこなう。緊急ニュースや世界的な式典の生中継など。          ニュース番組受信                                                                       ON AIR (放送)(同時通訳)
            
放送通訳の言語的特徴
テレビの視聴者という不特定多数に向けて発信するマスメディアの仕事である
耳で聞いてわかりやすい日本語
誤解を招く語彙は使わない(同音異義語など)
難しい漢語はさけて和語を使う
なじみのない略語には補足説明
複雑な構文はさけて短い文で
映像にあわせて日本語訳を編集
アナウンサー並みの明瞭な発音、発声
放送通訳者の資質
ジャーナリスト
世界の出来事に関心があり、時事問題に敏感
アナウンサー
聞きやすい発音、発声、速度、正しいアクセント、抑揚
通訳者
同時通訳にも対応できる通訳技術
翻訳者
時差通訳における読み原稿作成
放送通訳の実際
では、ここでVTRを利用して放送通訳の現場を実際に見学してみましょう。
NHKの番組「英語でしゃべらナイト」の
一部を見ていただきます。
コミュニティー通訳
地域のなかで
外国語を母語とする住民のために
教育、福祉、行政、生活支援などの
通訳や翻訳を行う仕事

日本の外国人人口
2006年末の外国人登録者
208万5000人、
総人口の1.63%
地域差が大きく
浜松市は世帯数の5.5%
愛知県全体で2.7%
大阪府、東京都も多いが
東北・北海道、九州南部
は少ない
日本におけるコミュニティー通訳
日本が多言語社会になるにつれ需要は拡大
日本語を母語としない住民が年々増加
地域社会に住む外国人が多くなるにつれ、医療や福祉、教育、司法など様々の公共サービスの場での通訳が必要に
会議の通訳などよりはるかに報酬が低いため、ボランティアで行われる場合が多く、通訳の質については全く保障されていなかった

地方自治体の 外国人住民向けサービス
外国人相談窓口
外国人住民向け広報紙
通訳ボランティアの紹介・派遣・募集次ページから神奈川県の広報紙の例を示します。

医療現場での通訳
かつては通訳訓練を受けていないコミュニティー通訳が無償で行うこともあった。
しかし医療通訳は他者の人生を左右する可能性が高く、内容の専門性も高いため、通訳に際しての倫理規定の制定や、通訳者の質及び報酬を保証するための資格制度の必要性が投げかけられている
医療通訳関するNPO法人、研究会、勉強会などが発足しはじめ医療通訳をコミュニティー通訳から切り離して考えるべきであるとの認識も広がっている。

海外におけるコミュニティー通訳研究
次ページから上海で開催された「世界通訳者大会」の資料をもとに、Roda Roberts による 「コミュニティ通訳者の位置づけ」と題した研究発表の概要をご紹介します。
コミュニティー通訳の歴史
通訳の最も原初的な形態
カナダの通訳の始まりは十五世紀
カナダに来たフランス人が原住民と意思の疎通をはかるために、若いインディアンを二人誘拐してフランスに連れ帰り、言葉を教え込んでからカナダを再訪。→コミュニティー通訳の始まり。
コミュニティー通訳の業務
多岐にわたる仕事の場
入国管理、役所などの公共サービス、対話、エスコート、医療、学校、会社などで通訳を必要とする場合にはすべてコミュニティ通訳が使われている
ここではコミュニティ通訳者を「活躍の場としてコミュニティをベースにする通訳者」と定義する
だが、コミュニティ通訳は定義も基準もかなり曖昧なまま「何でも屋」的に働くことが多い
コミュニティー通訳の          呼称と通訳の形態
移民に対する社会サービスとしての通訳は社会文化的な融合を強調するので「文化通訳」と呼ばれることがある。あるいは一対一の対話を訳すという側面に注目し、「対話通訳」と呼んでみたり、通常は非常に短いセンテンス単位の通訳を行うことから「逐語通訳」と呼ぶこともある。
通常、非常に短いセンテンス単位で通訳する(会議通訳は同時通訳と7分程度の長文逐次通訳ができなければならない)
ボランティア通訳
ボランティア通訳者が多いことがコミュニティ通訳の特徴 
多くの場合、二カ国語を話すかどうかだけが問題で、通訳の経歴は問われない
コミュニティ通訳者に対する訓練はあまり行われない
ボランティア通訳
オーストラリア、カナダ、スウェーデンではコミュニティ通訳の訓練を受けられる場所があるが、非常に本格的な教育とは言えないし(大学院レベルではない)、学習時間も短く、内容も比較的簡単なものにとどまっている
訓練を受けてフリーで仕事を受けるコミュニティ通訳者は、通訳者派遣業者に登録したり、個人や企業に雇われて仕事をすることもある
コミュニティー通訳の問題点
会議通訳、法廷通訳は長年の発展のなかで形成されてきた基準を持っているが、今のところ雑多な業務を何でも引き受けているコミュニティ通訳には何らの基準もなく、世界で唯一の統一基準があるとすれば、それは「二カ国語を話すかどうか」の一点につきる
このため、コミュニティ通訳に対する訓練も達成目標の設定はかなり困難
コミュニティー通訳に関する              最近の動向
この十年ほどでコミュニティ通訳の果たす役割が重視されるようになってきており、その業務範囲、定義、仕事をするための最低限の能力基準、効果的な訓練方法などに関しても検討されるようになってきた
最終的には世界各国のコミュニティ通訳についてコンセンサスを得られるようにしたい
そうすることで初めてコミュニティ通訳者の身分の保証と職業上のアイデンティティ確立が実現する
コミュニティー通訳の実際
では、ビデオテープでコミュニティー通訳者が実際にどのような働き方をしているかを見てみましょう。
「ドキュメント にっぽんの現場 マリナの赤い電話」を視聴します。30分間の番組です。