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1999年6月12日に行なわれた特別講演会「通訳者の手帖」を4回にわけて掲載しています。
(無断転載はご遠慮下さい。) 

Dプロ公開講座・特別講演会 「通訳者の手帖」講演録(4)最終回

 
   最後の話題ですけれど、じゃあ、よいコミュニケーションをするためにはどんなことが必要なのかというと、聞くときには相手の言っていることに対して反感を持って聞くとわからなくなるんですよね。だから「こんな話はつまらない」とかそういうふうなことでは聞いてないわけです。普通に会話をしているときには「なんてくだらないことを言っているんだ」とか「つまらないことを言っている」っていうふうな気持ちが出てくるんですけれども、通訳者として仕事をしているときにはどんな話でもその話のあるがままに全部受け入れる必要があるんですね。

 できればその話し手の気持ちと、自分の気持ちを合わせていく、共感したときに一番相手の話がよくわかる。共感できない話の時に、まあ相手が嫌いだとか、気にくわない人だっていう場合には、相手の言っていることが自分に入ってこないんですね。ですから、通訳者は話を聞くときには相手になるべく共感して聞いていくことが大事です。

 話し手にとって大事なことは、自分の話している相手は誰かをよく理解することです。自分の話している相手というのは通訳者も含まれるし、聴衆も含まれる、情報の送り手も含まれるし、媒介してくれる人も含まれるので、通訳者にわかるような話をしなくてはいけないということ。それからもう一つは、情報を受ける人たちが聞きたいようなことを聞くということ。人間が話してる内容を一番よく理解できるときというのは自分の聞きたいことをしゃべってくれているときなんですね。自分の聞きたくないことをいくらしゃべってもですね、あんまり入ってこないんですよね。だから、相手によって話し方も変えなくてはいけないし、内容も考えなくてはいけない。これが話し手にとって、話し手が一番注意しなければいけないことだと思います。

  つまり、通訳者というものはさっき黒子とか透明な存在とか空気のような人ということを言いましたけれども、そういう意味では話し手に対して自分の意見を持たずに聞くということが一つのポイントになるんですね。話し手と共感するというのは、話し手の立場になって聞くこと、そして聞き手に対してはその聞き手になって話すことが一番必要です。つまり通訳者は何かの情報を理解するときには話し手に歩み寄って、もちろん話し手にも通訳者の方に歩み寄ってもらわなくてはいけないんですけれども、お互いに歩み寄って一つの情報を作り出して、そしてそれを理解した内容によって別の言語に置き換えて、言葉から言葉への、単語から単語への置き換えではなくて、情報から情報へ、意図から意図へっていう置き換えで置き換える。そして聞き手が聞きやすいような、受け入れやすいような言葉にして話すっていうことが、一番通訳者を介在させたコミュニケーションの中で重要なことになってくると思います。

  その話し手、つまり情報の送り手と通訳者と受け手との関係ということと、それからよりよいコミュニケーションを達成するためにはどんな態度を持って望まなければいけないかっていうところが、多少短めになりましたけれども、だいたいこんな所ですべての内容を話し終えたので、これからもしも質問等があればお受けいたします。

(以下、質議応答の部分はカットさせていただきました)

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